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土屋公雄のブログ

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体験と記憶の中に残るもの 
 国内でアーティスト・イン・レジデンスという言葉が使われるようになって、どれほど経つのであろうか。・・・・・僕が初めてレジデンスしたのは1987年の夏、フランスであった。
思い返すと、あれから20箇所ほどの異なった国や都市・街でレジデンスして来たことになる。
 アーティスト・イン・レジデンスとは、創作活動の場として或いは作家が日常から逃れ、異文化に触れることで創造力を孵化し、より豊かな創作への活力を得る為に、しかるべき場所に一定期間滞在することである。もちろん海外の美術館などのレジデンスは、展覧会の為の作品制作という明快な目的を持ったレジデンスであるが、・・・・・僕の場合は、美術館以外でもその大半が制作をメインとするレジデンスであった。

 人間が異文化で生活するということは、これまでの常識をどこかでもう一度疑わなければいけないことになる。そしてこのことが作家自身、自己を客観的に見直す切っ掛けとなり、他者と自己の再認識にはじまり、・・・・・自分発見へと繋がるのである。さらにこの経験は次の段階で、作家自身の意識の中に普遍的表現の問題を浮上させ、表現をより本質的な世界へと向かわせるのだ。
 海外でのアーティスト・イン・レジデンスの場合、その滞在アーティストのほとんどは他国籍である。民族や宗教の違うアーティスト同士が、同じ空間の中で生活をし、多様な文化的価値観に触れながら創作活動を行なうのだから、アーティストにとっては実に刺激的で国際的な場と言えよう。さらにレジデンスでは、地域と関連したより幅の広い人的交流も魅力の一つとなる。地元住民はもとより、キュレーターやジャーナリスとなどの美術関係者も出入りし、常に自分の仕事をプレゼンテーション出来る環境が整っているのだ。

 以前僕が2ヶ月ほど滞在したデンマークのレジデンス・プログラムでは、毎月テーマを決め、そのテーマにふさわしい評論家や学者・大学教授、アーティストを招き、オーディトリアムでシンポジウムを開催していた。聴衆はもちろん我々アーティストであり、芸術に興味のある地元住民も参加していたことを覚えている。・・・・・まさにその環境は、アーティストや地域住民のための専門大学院とも言えるもので、普段交流のない評論家や大学教授の講義を受け意見交換が出来ることは、アーティスト・イン・レジデンスが、アーティストや地元住民の生涯学習の場としての役割も果たしていたのである。

 現在ベルギーのゲントに、2006年度・ムサビ土屋研究室を卒業した、若きアーティストがレジデンスしているのだが、彼が滞在する施設はゲント市立現代美術館の真裏に位置し、20名ほどのアーティストと共に創作活動を行なっている。このレジデンスは美術館に隣接していることから、現代美術館はもとより大勢の美術関係者が訪れ、彼らとのディスカッションの機会もあるようだ。
 彼からのメールを読んでいると、かつての自分と重なるところも多く、慣れない異国で、孤独と向き合いながら必死に己の表現世界を開拓・構築しようとする姿が、いとおしくすら思える。ただ今回の長期滞在は彼にとってビック・チャンスであり、この与えられた時間が充実したものとなるよう期待している。

 アーティスト・イン・レジデンスとは単にアーティストの宿泊施設ではない。作家本人がその場でどの様なことを体験し、どれだけ思考し、如何に思い込みの自分から解放されるかが重要なポイントとなる。他国籍・他文化の中で、自分がこれまで信じ込まされてきた価値観が、決して絶対的ではないことに気づかされ、これまで生きてきた日本の社会・文化について、外側から客観的に見つめることが自分自身の「所在/アイデンティティ」を見つめ直す機会となるのである。


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Date : 2009.02.21 Sat 14:07  未分類| コメント(-)|トラックバック(-)
 

  

 

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