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土屋公雄のブログ

母の法要と小旅行
 母の十三回忌、今年も京都・智積院で無事法要を営むことができた。・・・・・有難い。前回は父の十七回忌のときだから、すでに3年前になる。しかし両親が他界し、すでにこれだけの時が経ったのか、なんとも早いものだ。僕自身、歳を取ったと感じるのも無理からぬことである。

 智積院は三十三間堂から徒歩でわずかの距離にあり、真言宗智山派の総本山である。院内には長谷川等伯やその息子・久蔵作とされる「桜図」など、桃山を代表する障壁画が収められ、大書院東側は、利休好みとされる名勝庭園が広がっている。今年は大震災のせいもあってか、境内に観光客もまばらで、法要の後は池を見下ろす縁に座り、母の記憶と共に超日常的なひと時を過ごす事ができた。
 すでに恒例となっているのだが、両親の供養の際には前日京都に一泊し、福井から来た姉そして妻・家族と名所を巡り、美味しい食事をし、ゆったりとした時間を過ごすのが楽しみである。確か前回は、南禅寺の傍にある山県有明別宅の無鄰菴に訪れ、庭を観ながらお抹茶を頂いた。今回は東山にある「菊乃井」で懐石を食べ、その後高台寺を拝観した。この寺は、豊臣秀吉の正室「ねね」が、秀吉の菩提を弔う為に建てた寺である。従って「ねね」のイメージからか女性的で優美な感じのする禅寺だ。(さらに「ねね」は、現在NHKの大河ドラマで宮沢りえが演じているせいか、僕にはこの二人がダブってしまっている。)ただ、今回僕の目的はこの寺の庭を観ることだ。作庭師・小堀遠州の代表作とされる「鶴亀の庭」は、境内中央開山堂を挟み込むよう左右に「臥龍池」と「堰月池」が配置され、さらに方丈前庭の枯山水と、それら全てが東山の山緑を借景とした見事な美庭である。春にはしだれ桜、秋には紅葉、それぞれの季節に水面に映しこまれる絶景も、さぞや幻想的なことであろう。さすが遠州作・高台寺の庭は国の名勝庭園と謳われるだけあって、心奪われる空間造形の連続だった。

 今年の法要は、一日予備日を取って京都の帰り奈良に立ち寄ることに決め、奈良では以前より宿泊してみたいと思っていた奈良ホテルに予約を入れていた。
 このホテル、東京駅舎や日本銀行と同様、日本を代表する建築家・辰野金吾の設計による桃山御殿風檜造りの建物で、築100年を超える歴史と伝統はもとより、和洋折衷の融合美は当時のオリジナルとしも貴重なもので、優雅で粋を凝らした建築空間には十分堪能することができた。

 翌朝、興福寺参拝の際は、偶然にも月に一度の勤行に立ち会うことができた。読経の流れる中、国宝館に収められた千手観音菩薩や阿修羅像(乾漆八部衆)、乾漆十大弟子立像など、奈良時代の彫刻に仏として向き合うことができた。
 仕事柄、旅をする機会は多いのだが、その土地の史跡名勝をゆっくり味わうことはあまりない。(もちろん時間も十分無いのだが・・・・・。) ただこの歳になると、一期一会がしみじみと肝要に思える。
 今回の母の供養は、心性の深い部分を豊かにしてくれる小旅行ともなったようだ。・・・・・感謝である。


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Date : 2011.06.27 Mon 08:16  未分類| コメント(-)|トラックバック(0)