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土屋公雄のブログ

若きアーティストへ捧ぐ 
毎年のよう、研究室から明日を担うクリエーター、アーティストの卵達が巣立って行く。
最近の僕の楽しみの一つは、これまでに研究室を卒業していった彼らからの近況報告を聞くことだ。学部卒業後の彼らの進路は様々である。そのまま本校の大学院に進む者、また他大学の院へ、或いは海外の専門学部に進む者いる。もちろん建築・デザイン関係の事務所へ就職していく者もいれば、かつての僕のように、なかなか進路が決められず、のた打ち回りながら自分の方向性を探している者もいる。
思い返すと僕の二十代、大学卒業当時などは、ただ漠然とした夢だけを抱え、その時々を自己中心に、社会との接点も持てないまま、現実を逃避し生きていた気がする。そのことから比べれば、卒業生の多くは、堅実に自分の進むべき道を、苦しみながらも前方を見据え、歩いているよう思える。

先日も、地方都市の環境アート・コンペでグランプリを受賞した、2006年度卒業生、田原唯之君の作品「呼吸」を見てきたのだが、そのプロジェクト・スケールといい、仮設に造られた水田の中央より、泥水が7~8メーターの高さまで吹き上がるものであった。作品が設置された場所、またその意味性からも、地域の文化・風土的文脈の引用も重視されたその内容は、単に表面的美しさや技巧の追求を目的とするのではなく、作品の内に、作り手の同時代的メッセージが込められたものであり、現代における社会・環境といった思想性も反映された、実にクオリティーの高い作品に仕上がっていた。昨今の、大衆文化的サブカルチャーが主流とされ、表現の多くが現象的で類似化して見える美術界にあって、彼の作品テーマは普遍的でスケールも大きく、アートの持つ内省的で、精神や生命感に訴える力も十分発揮されたものとなっていた。 http://www.sosaku.jp/

彼の他にも、現在さまざまな領域で、着実に実力を蓄えている若きクリエーターやアーティストはいる。彼らも必ずや、日々の努力や経験、孤独や挫折を次の創造的表現に結び付け、いずれ出て来るはずである。

若きアーティストへ・・・・・。この、体験なき情報化の時代は、世界を水平に見るのではなく、個々を垂直に見る座標軸が必要である。


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Date : 2008.08.14 Thu 10:32  未分類| コメント(-)|トラックバック(-)
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