土屋公雄のブログ

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箱根時間
梅雨の訪れと共に、今年もアトリエのアジサイが色づき始めている・・・・・。

この時期になると思い出す展覧会がある。それは1999年夏開催された、箱根彫刻の森美術館・開館30周年記念「森に生きるかたち」展である。この企画は、30周年を迎えた彫刻の森が「ふたたび自然の中へ」をテーマに、自然素材の要素を取り入れ、現地制作をメインとしたアーティストが9名(伊藤公象、國安孝昌、遠藤利克、北山善夫、戸谷成雄、眞板雅文、林武史、藤田昭子、土屋公雄)参加したものであり、アーティストはそれぞれに、80年代90年代をサイト・スペシィフィックな表現を展開してきた作家たちであった。
野外制作において、常に僕はその作品が作られる場所と、作品の持つ意味の連続性について考えてきた。従って、この記念展においても、彫刻の森がこれまではたしてきた美術館的役割と意味、さらに作品が立ち上がる場所の記憶や地形、文脈を考慮し作品を制作することとした。僕に与えられた設置サイトは、彫刻の森敷地内南側の、かつて近現代の彫刻が展示されていたところであり、今回の企画の為、それらの作品が撤去された跡地であった。そこで僕は、東南側に下る勾配を利用し、撤去の際出た彫刻作品用コンクリート台座の瓦礫を使い、前方後円墳型ですり鉢上の山(高さ370cm、奥行き20m、総重量150t)を積み上げ、さらにその内側にべコニヤの花4.000鉢を敷き詰めた。
5月よりスタートした現場での土木作業は連日過酷を極めた。制作には、美術館の技術者をはじめとし、担当学芸員・地元業者・ボランティアの方々に、雨の日、炎天下の日を問わず、汗と泥にまみれ作業に従事していただいた。プロジェクト作家にとって、現地制作スタッフに恵まれることは最高の喜びである。・・・・・野外での現場仕事は常にハードである。ただ、99年の箱根の現場には、スタッフの笑い声が耐えなかったことを、今でも覚えている。

当時僕は、もう一つ重大な事態と向き合っていた。・・・・・それは母との別れであった。

あの頃、箱根と実家のある福井を何度往復したことであろうか・・・・・。
新幹線の中では、箱根での作業と、母の夢を繰り返し見ていたことを覚えている。
介護の甲斐もなく、母の容態は次第に悪化していった。最後の一週間、病院のベットに横たわる母の顔には、かつての笑顔はすでに無く、僕はただ、そんな母を枕元で泣きながら見つめていることしかできなかった・・・・・。
そして、6月28日母は他界した。
葬儀後、再び僕は箱根に戻り作業を継続した。母の死を一時でも忘れたく、僕は必死に瓦礫を積み上げた。
・・・・・汗と涙が同時に流れ、感情と労働が透明に交じり合い、これまでに経験したことの無い感覚で、僕は制作に集中できた気がする。作品は7月中旬、スタッフの多大な協力の下、無事完成。「記憶の場所」と題し、一年の期間で展示され、その間二度の植栽もはたし、今となっては忘れることのできない、思い出深い展覧会となった。
国内で、単独の美術館によるあれほど大規模な企画展は、後にも先にも「森に生きるかたち」展だけであろう。参加した9名の作家は、それぞれが力のこもった作品を制作し、当時「森に生きるかたち」展は、多くのメディアに取り上げられ、日本の美術界にあって重要な企画に位置づけられるものとなった。
そしてこの記念展は、翌年の秋、閉幕と同時に制作されたインスタレーションのすべては撤去され、作品はそれぞれが記憶の中にしまい込まれていった。

あの時以来、僕には箱根が特別な場所になったようだ。
毎年梅雨のこの時期、雨に霞む彫刻の森を訪れ、ゆったりとした箱根時間の中で、贅沢に展示された彫刻を見るのが好きである。数ある野外美術館の中でも、近現代の彫刻が体系的に充実し展示されている美術館は箱根だけであろう。

アジサイが咲き始め、僕の心は箱根に向かっている。
今年もまた、あの「記憶の場所」で、当時の記憶と透明な感覚に出会えることを期待して・・・・・。


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Date : 2008.06.18 Wed 11:52  未分類| コメント(-)|トラックバック(-)
 

  

 

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