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土屋公雄のブログ

霊性の丘 カラニッシュ Ⅲ 
いつの世も人間は、「場」に意味を与え、その「場」と関わることで生きてきた。
したがって、聖地なる「場」も霊性を与えることで、聖地としての特別な役割をはたしてきたのであろう。
アウター・ヘブリディーズ諸島に浮かぶルイス島の西岸、切り立った入り江の丘に立つカラニッシュ遺跡もまた、かつての古代人たちによって、霊的な力を与えられることで聖地として創り出された瞑想の場であったのだろう。可視の世界と不可視の世界をつなぐ象徴的な場としてのカラニッシュ。イギリスの数あるスタンディング・ストーンの中で、最も美しいとされるこの立石群遺跡に、僕自身立てたことは、奇跡に近い出来事だった。

今から約四千年前に建立された、四十八個の巨石からなるこの謎の十字列石は、カラニッシュの丘に落日の陽光を受け、貴婦人の様立っていた。
南北に長く伸びた柱列は全長約120メーター。東西には約40メーターの長さにわたりスタンディング・ストーンが立っている。さらにその2本の柱列が交差する中央部分には、直径12メーターのストーン・サークルが並び、それら全ては地上5メーターの高さを持つ巨石で、堂々天に向かいそびえ立っている。この空中から見ればケルト十字の神秘的形をもつスタンディング・ストーンは、ここカラニッシュ以外、世界のどこにも存在しないのだ。
しかし古代人たちは何を目的に、この絶海の島の荒涼とした風景の中に、巨大スタンディング・ストーンを造ったのか?
北側の回廊状の柱列が、夏至前後の満月が沈む方向を指し示していることや、中央の十三個の石のサークルが、東西南北、各方位に正確に並べられていることから、暦を知る為の天体観測用装置だったのか・・・・・。或いは、自然の中に神の存在を信じる古代人にとって、祭礼・宗教儀式を行う神聖な場所だったのか・・・・・。いずれにしろ、銀色に輝く水面を背後に、傾きかけた日差しを浴びて細長く延びる巨石の影を見つめていると、時間はどんどん逆行し、いつしか僕も古代時間の記憶の中に埋没していく感覚となっていった。

夕暮れが迫り、南の空に上弦の月が白く輝き始めた頃、カラニッシュの丘はさらに神々しく幽玄の世界へと変わっていった。
今 僕が感動しているこの一瞬一瞬は、きっと四千年前と何も変わることはないだろう。かつてこの地を聖地と定めた古代人の霊性は、今尚確実に生き続けていた。


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Date : 2007.10.29 Mon 15:01  未分類| コメント(0)|トラックバック(0)
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