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土屋公雄のブログ

ル・コルビュジエ展
先日 森美術館で開催されているル・コルビュジエ展を見に行った。コルビュジエの展覧会は、これまでにも幾度となく見てきたのだが、国内で、これだけの作品を一堂にするのは今回が初めてだ。ル・コルビュジエといえば、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライトと並ぶ、近代建築の三大巨匠である。
彼の建築表現の特徴といえば、それまでのヨーロッパにおける伝統的石積みの工法から、躯体に鉄筋コンクリートをもちい、スラブ、柱、階段のみを主要素とするドミノシステムを考案したことにある。さらに建築における装飾性も極力はぶき、単純で平滑的なデザインから、合理性を追求したモダニズム建築の中心的存在であり、今日の現代建築において、お手本的建築家である。
実は僕自身、1989年ベルギー アントワープ、カリネ・カンポ ギャラリーでの個展の際、
その画廊オーナーの友人である画家が、コルビュジエ設計による、アトリエ件住宅に住んでいるということから、たっての願いと無理を言い、一晩そのアーティスト宅に泊めていただいたことがある。
当時の僕は、そのあまりに統一されたデザイン・空間構成、さらに歴史的建築家ル・コルビュジエ設計というプレッシャーから、緊張と興奮のため一睡も出来なかった。
今では笑い話にもならないが・・・・・、ただ住宅建築とは難しい。
そのデザインの美しさと実用性とは、別物のように思えるのは僕だけだろうか。

今回の展覧会で、最後の部屋に展示されていたコルビュジエ晩年作「海への回帰」愛する地中海を望むフランス カップ・マルタン、終の棲家は何を語っているのであろうか。「住宅とは住むための機械である。」と言い放ったモダニスト・コルビュジエ。孤独に思えるそのシンプルな木造家屋。僕には何とも気になる一作であり、いつの日か、機会があれば訪れてみたいと思った。


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Date : 2007.07.11 Wed 22:14  展覧会| コメント(1)|トラックバック(3)
マルレーネ・デュマス展
東京都現代美術館でのマルレーネ・デュマス展は、ゆったりとした空間の中で、それら作品のイメージを忠実に、個々の自立性も明快に体感できるよう、贅沢でエレガントな展示となっていた。またデュマスのような絵画の持つ、混沌と沈黙にも細心の注意がなされ、適度の緊張感の中で絵画を体験できるよう空間構成されていた。
やはりアートは、そのオリジナルを体全身で受け止めてこそ、見えてくるものがある。僕などは、その作品を確認する上でも、あえて目を閉じ、オリジナルと対峙することがある。リアリティーとは、作品の質が高ければ高いほど存在感を増すものだ。
デュマスの作品群にも、その力は十分感じられた。
彼女の描く人物には、常にエロスと死の影が付きまとい、生を表現することで死の世界を、光を捉えることで、深遠なる闇の世界に引きずり込む誘惑がある。
最近の僕は、「死」以上に「闇」の世界が怖くてたまらない。
たしかにデュマスは、感情を持って「闇の世界」を我々に突きつけている。

美術が力を無くしている今だからこそ、美術館には感情を震わす展覧会を企画してほしい。メッセージを持った展覧会には、観客は来ないものだ。  だが、それも必要だ。


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Date : 2007.06.27 Wed 00:32  展覧会| コメント(1)|トラックバック(0)
アルフレッド ウォリス展
久しぶりに心にしみる展覧会を見た。
昨今の国内における展覧会の多くは、サブ・カルチュアを中心としたメッセージ性に乏しいものや、ただただ集客のためのエンターテイメントと化したものであったり、美術が本来果たすべき役割とはほど遠いものとなっているが、現在 東京都庭園美術館で開催されているアルフレッド ウォリス展は実に内省的で、人間が生きるうえでなぜ芸術が必要なのかを問いかける展覧会であった。
僕自身、ウォリスの作品を見るのは初めてだし、名前すら聞いたことのない作家であるが、彼の描く風景がどこか懐かしく思えるのは、かつて僕が特別な思いを抱いて訪れた場所、イギリスのセント・アイブスと深いかかわりのある作家であったこと、そして彼の色彩には、僕が生まれた北陸・福井の空と海の鉛色が多く使われていたことなど、きっとウォリスと僕の間には共通した記憶の情景があるのかもしれないと思った。


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Date : 2007.03.24 Sat 13:16  展覧会| コメント(0)|トラックバック(0)